理事長挨拶
(一財)岩手県退職教職員互助会(「退教互」)は、国民健康保険制度が日本国内全ての市町村に普及し、国民皆保険制度がようやく実現した1961年10月に発足しました。
当時の国保は5割給付で、しかも高額療養費制度や高齢者医療制度のない時代でしたから、大病を患うと、医療費の支払いのために退職金やわずかばかりの恩給を使い果たしてしまうだけでなく、家族にも多大な迷惑をかけるからと、病院に行くことをためらったり行かなかったりしたということが多くあったと聞いています。そんな退職者や高齢者が置かれている現状を目の当たりにする中で、教職員が安心して教職に専念できるようにと、退職後の医療費給付を主な事業とする退教互が創られました。
本来、「国民の医療と健康は、国の責任で守るべきであり、国へ働きかけるべきもの」という反対意見も多かった中で、将来、国の社会保障制度の充実によって「患者負担のない医療国『日本』」が実現し、その役割を終えることを願いながら、岩手の教職員が自らの手で「健康保険給付+退教互給付=患者負担『0』」を実現しました。
日本はもとより世界にもまったく例のない中で創設する制度ですし、当然、長期にわたる制度存続が不可欠な事業ですから、退教互設立後の運営状況に応じた見直しを行うことを前提にしながら、制度の発足にこぎつけたことは言うまでもありません。事実、これまでも掛金納入期間の見直しや給付事業の見直し、受診者負担の新設や改定等を実施しながら、高騰を続ける医療費や度重なる健康保険制度の改定(改悪)、資産運用環境の悪化、退職会員の増加に対応してきました。
制度の見直しにあたっては、その都度検討委員会を設置し、組織検討を繰り返し、現職・退職会員の相互理解のもとに制度の変更を実施してきました。
退教互の設立によって、どれだけの退職会員とそのご家族が助けられ恩恵を受けたか計り知れません。今では、他県の教職員やそれ以外の職域にも退職互助の制度が広がっています。その先駆的役割を果たしてきたのが岩手の退教互であったと自負しています。
他県の多くの互助会が退職互助事業を行う中で、岩手退教互の療養費の給付方法は他に類例を見ないものとなっています。退教互は、岩手県内の医療機関のご理解とご協力のもと「窓口会計なし」で医療が受けられる方式での給付を行っています。会員の方々の医療費は、受診者に変わって退教互が病院・薬局等へ支払うため、持ち合わせを気にすることなく医療が受けられると大変喜ばれています。また、退教互には県内16地区と東京、仙台のあわせて18地区の地区組織があり、研修会等の会員交流や会員相互の見守り活動を行っています。退職会員の皆さまにとっては、退教互は退職後の生活に欠かすことのできない存在となっています。
未だ退教互の現職会員に加入していない教職員のみなさんも、ぜひ退教互の輪に加わり、退職後の安心に備えましょう。
一般財団法人 岩手県退職教職員互助会
理事長 佐藤 工